会社案内
お知らせ・更新情報
セミナー開催案内
解説&動画コンテンツ
動画販売
個別相談
情報会員登録
お問合せ
経営管理会計コラム
生成AIコラム
アナリティクスコラム
生成AIコラム
作成日:2025/07/12
創発能力とは

「創発能力(Emergent Abilities)」という言葉は、生成AIに限定された特有の言葉ではありませんが、近年の大規模な生成AIモデルの進化と成果によって、この文脈で非常に注目され、広く使われるようになりました。

 

創発(Emergence)」という概念

 

まず、「創発(Emergence)」という概念自体は、AIの分野に限らず、複雑系科学、システム論、哲学、生物学、心理学など、幅広い分野で用いられてきた学術的な概念です。

  • 一般的な意味での創発:

    • 個々の構成要素(部品、エージェントなど)が単純なルールや相互作用に基づいて振る舞うことによって、それらの構成要素の単純な総和では説明できない、より高次の、予測困難な、新しい特性や機能がシステム全体として現れる現象を指します。

    • 全体が部分の総和を超え、部分からは予測できない性質を持つようになる、という考え方です。

    • :

      • 蟻のコロニー: 一匹一匹の蟻は単純な行動ルールに従っていますが、コロニー全体としては非常に複雑で効率的な社会構造を形成し、食料調達や巣の建設といった高次な行動を示します。

      • 脳の意識: 個々のニューロンは電気信号を発するだけのシンプルな要素ですが、それらが膨大に結合し相互作用することで、「意識」や「思考」といった高度な精神活動が創発すると考えられています。

      • 結晶の形成: 個々の原子や分子の単純な相互作用が、マクロレベルで美しい結晶構造を形成します。

 

生成AIにおける「創発能力」の特異性

 

大規模な生成AIモデル、特に大規模言語モデル(LLM)の文脈で「創発能力」が特に注目されたのは、以下の理由からです。

  1. 予測困難な性能向上: モデルの規模(パラメータ数、学習データ量、計算量)をある閾値を超えて拡大していくと、それまで全く見られなかった、あるいは非常に性能が悪かったタスクにおいて、突然飛躍的に性能が向上したり、新しい種類の能力(例:多段階の複雑な推論、プログラミングコード生成、数学的問題解決など)が現れる現象が観察されました。これは、単にモデルが大きくなったから性能が線形に改善した、というよりも、質的な変化として捉えられました。

  2. 規模の拡大が能力を「解き放つ」: 小規模なモデルではどれだけ試行錯誤しても実現できなかったような高度な能力が、規模を拡大するだけで「自然に」現れることが示されました。これは、「規模を拡大すること自体が新しい能力を生み出す」という、従来のAI開発パラダイムに大きな変化をもたらしました。

  3. 具体的なタスクでの顕現: 特に、一見すると直感的にAIが苦手としそうな、以下のようなタスクで創発能力が確認されました。

    • 複雑な算術問題の解決

    • 多段階の論理的推論

    • 新しいプログラミング言語でのコード生成

    • ジョークの理解や生成

    • ある種の常識的推論

 

まとめ

 

したがって、「創発能力」という概念自体は生成AIに固有のものではありません。しかし、「AIモデルの規模を拡大することで、それまで見られなかった、予測困難な高次能力が突然現れる現象」を指す言葉としては、近年の大規模生成AIの文脈で非常に重要視され、この分野の進歩を語る上で欠かせないキーワードとなっています。生成AIが人間の知能に近づく、あるいはそれを超える可能性を示唆する現象として、現在最も注目されている概念の一つと言えるでしょう。